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【第二章】ヨコハマ事変篇 〜ひとしずくの願い〜

第4章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽3〜






『そのくらい知ってるわ、何だかご主人と関わっていくうちに貪欲になっていく気がする』

弥生はふっと笑い、頬杖をつきながら少し遠い目をする。

「欲望で身を滅ばさないようにしなさいよ」

『そんなヘマしないわ!』

「ふふ、ならいいわ」

弥生は小さく笑って立ち上がり、電話線を肩に引っ掛けたまま台所の鍋に目をやる。

「高校行かないんでしょ?手続きしておくわ」

『ありがとう、お母さん!』

「マフィアに入ったことは私からお父さんに伝えておくから、これからも頑張りなさいよ』

『また政府に駆り出されてるんだ。私がマフィアに入ったことを聞いて失神しないといいけど‥‥』

弥生は思わず小さく吹き出し、鍋の蓋を開けて中をかき混ぜた。

「ふふ、お母さんは夕飯の支度しないといけないから切るわね」

『うん、じゃあね』

電話を切った弥生は小さく息を吐き、吹きこぼれそうな煮物を火から下ろす。

「……マフィアの娘かぁ……またれー君を慰めないとなぁ」

誰もいない台所で弥生は少しだけ、くすくすと笑いながら味噌汁の出汁を取った。
先程のような楽しそうな表現とは違い、弥生は浮かない顔をする。

(この子には、この子の道を進んで欲しい。けど……)

弥生は震える手を静かに握りしめた。
今はまだ、黙っていよう。
明日か、明後日か、遠くない未来に必ず伝えなければならない。

(私の一族について話さなければいけないわね)





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