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【第二章】ヨコハマ事変篇 〜ひとしずくの願い〜

第4章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽3〜








中也は帽子をくいっと指先で直しながら、横を歩く美鈴に小言を漏らす。

「お前なぁ……姐さんには頭が上がらねぇんだから、二度とケンカ売るんじゃねぇぞ」

「ご主人の命令なら仕方ありませんね‥‥でもが、ご主人が止めに来なかったらあの時−−−」

「言い訳すんな」

「……あの、私をマフィアに入れてもいいんですか?」

美鈴は俯いたて、ぎゅっと手を握りしめている。

「私はご主人に負けました。つまり、弱いんです。これでも頑張ったほうなのですがね……」

「……バカか、手前」

美鈴ははっとして顔を上げる。
中也は苛立たしげに息を吐き、ゆっくりと美鈴に視線を向ける。

「……え?」

「負けたとか、弱いとか……そんなの知るかよ」

美鈴の視線と中也の視線が、真っ直ぐにぶつかる。

「手前は手前のままでいいんだよ」

静かに吐き出された言葉に、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
美鈴は小さく目を見開き、思わず口元を押さえた。

「……ご主人……」

「泣くな、面倒だ」

ぶっきらぼうに背を向ける中也の後ろで、美鈴は小さく震える息を吐いた。
その胸の奥に、小さな火が灯る。
そんなやり取りをしていると、廊下の奥からふらりと現れる黒いコートの男。
ポケットに両手を突っ込み、薄い笑みを浮かべている。

「あれぇ?中也じゃないか。珍しく子猫ちゃんを連れてるねぇ」

「……げっ!!」

中也の顔が即座に険しくなる。








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