第4章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽3〜
美鈴がポートマフィアに正式に決まった数十分後、中也は深いため息をつきながら、隣を歩く美鈴を横目に睨んでいた。
「はぁ……まったく……」
美鈴は両手を背中で組み、ぷいっと横を向いて頬を膨らませていた。
「何で私が謝らないと‥‥」
「手前はマフィアの幹部に攻撃を仕掛けたんだ。そして、怪我をさせた。普通なら首が飛ぶんだ、分かってんのか?」
美鈴は拗ねたように一歩前に出ると、両手をぶんぶん振って訴える。
「それが駄目なんだよ……」
中也は頭をかきむしりながら、美鈴の額を人差し指でぴんと弾く。
「いったい!」
「侵入者と勘違いされんのは当然だろ、姐さんは護衛も兼ねてんだからな。 」
美鈴は小さく鼻を鳴らし、今度は腕を組んで中也を睨み返した。
「まぁ、あの人のお陰でご主人の下で働くことになりましたし、お礼くらいは言ってあげますよ」
「何で上から目線なんだ」
中也はあきれ果てたように首をすくめ、帽子を深く被り直した。
美鈴はいたずらっぽく笑って、そっと中也の袖をつまむ。
「だって私のご主人の下に居られるのは、私にとっては何よりのご褒美ですから!」
「全く……」
中也はもう一度、深いため息をついたが、その口元はどこか小さく笑っていた。