第2章 青の時代 〜忘れられないあの日の思い出 𝓟𝓪𝓻𝓽1〜
「分かってます。危ないところだって……でも!」
言葉が詰まった。
けれど中也の視線は逸れない。
「誰に笑われても、どうでもいいんです。中也さんの隣に……立てるなら……」
中也は無言のまま美鈴に近づくと、ゆっくりと彼女の前でしゃがみ、目線を合わせた。
「泣くな」
指先がそっと、美鈴の頬に触れた。
冷たい指先が涙を拭うように触れると、美鈴は驚いて瞬きをした。
「泣いてるガキは『羊』じゃ役に立たねぇ」
中也は笑いながら立ち上がり、肩を軽くすくめて言った。
「まぁいい、泣き虫でも使い道はあるかもな」
目を丸くする美鈴の前で、中也は不敵に笑った。
「ついて来い、こっから先は冗談じゃ済まねぇぞ」
そして背を向けた中也の後ろ姿に、美鈴は一瞬だけ息を呑み−−−すぐに小さく頷いて走り寄った。
制服の裾が夜風に揺れた。
新しい場所へ踏み込む音が、倉庫街の奥で小さく響いた。
中也の背に追いついて、小さく息を整えた美鈴は、歩きながらふと思い立ったように口を開いた。