第4章 自覚
嘲笑うように、冷たく言い放ち。
「雨の中放置しなかっただけ感謝しろよ」
暁は雨の中。
また、車へと戻っていった。
「…………ぃっってぇまじ、死ぬかと思った」
「おま、おまえ…………っ何っ」
何。
ヘラヘラしてんのよ!
この馬鹿っ
って思い切り罵倒してやりたい言葉たちを、飲み込んだ。
「雅お前ー、あんなにガチ切れした暁さん久々みたわ。何したん?」
「いゃ、ちょっと『匂わせ』的な?はぁーっ、にしてもやっぱ暁さん最高。一生あの人についてけるわ俺」
「…………暁にいらないって言われてけど、おまえ」
「そーだった…………どーしよヤッさん。俺破門?」
「…………知るか。どーすんだよお前、ざわつかせるだけざわつかせやがって。暁さんの殺気、みんなあてられてんじゃん」
「あの人殺気やばいもんなぁー」
あはは、なんて。
笑いながら。
ゴロン、て床へと転がって。
息が、あらい。
強がってるけどこれ。
相当痛いんじゃ…………。
しかもこの右腕。
「折れてるよね」
「あー、たぶん」
「腕だけじゃねーだろ、肋骨もやってるなこれ。息上がってんのバレバレなんだよ」
「ぇ、ちょっと柳瀬あんた、良く平気で…………」
ヤスの見立てに血の気が引いてくのがわかる。
まってこれ。
かなり重症なんじゃ…………。
「…………怪我、ない?」
す、て。
柳瀬の左手が頬へと伸びてきて。
視線が、合う。
「気が立ってる人の間なんか割って入っちゃだめじゃん莉央ちゃん。莉央ちゃんなんか、本気の暁さんに蹴られたら肋骨どころじゃ済まないよ」
「何…………言って…………」
怪我してんのはおまえの方じゃん。
「こんな怪我想定内」
よいしょ、て。
状態を起こして。
柳瀬はなんの前触れもなく組のみんなが見てる目の前で。
あたしにキスをした。