第2章 情緒
「…………」
あ、た、ま。
いってぇ。
何これぇ。
浮上した途端この激痛、ありえねぇ。
なんなん。
腹立つ。
なん、だっけ。
きのう…………。
「…………きのう」
そう。
昨日。
「柳瀬!!柳瀬いる?」
昨日の記憶。
柳瀬に『殺された』あとの記憶が全然ない。
くっそまじあの野郎。
まじで殺す。
絶対殺す。
自室のドアを怒りに駆られ力任せに開けて。
柳瀬を探す。
探すけど。
普段ウザいくらい目の前ちょろちょろちょろちょろしてるくせに。
なんで探すといないのよ。
イライラする。
「あれ、お嬢、具合良くなりました?」
「はぁ?」
「昨日雅のやつが夜中、ぐったりしたお嬢運んできてましたけど」
「その柳瀬は?どこいったの」
「自室にいませんか?」
「部屋ね、わかった」
これでも怒りで怒鳴り散らしたいの、我慢してるんだから。
まぁ最もあたしの機嫌が悪いのなんて、きっとあたしを見れば一目瞭然。
誰に思われようが構わない。
柳瀬のやつ。
絶対殺す。
「柳瀬!!」
スパーン!!て。
思い切り襖を開ければ。
すでに起きていたのか寝てないのか。
昨日とは違うスーツを見に纏い、ネクタイを締めているところで。
あたしを見つけるといつもの犬みたいな笑顔をあたしへと向けた。
「莉央ちゃん、身体平気?」
「おかげさまで頭くっそいてぇわ!!」
「わー莉央ちゃん口わっるぅ」
「冗談言ってんじゃねえし。なんなん、昨日のあれは!!」
「あはは、めっちゃ怒ってる」
「おまえは沈められたいのっ!?」
『あたし』に、あんなことして。
ましてや殺そうとしたんだから。
息が出来ない苦しさを覚えてる。
柳瀬の本気の目を、覚えてる。
「でも莉央ちゃん、組長(おやじ)さんに言ってないね」
「は?」
「自分の言葉の重み、知ってるもんね?」
「何…………?」
「言えばいいよ、莉央ちゃん」
「はぁ?」
「別に俺、指も命も惜しくないし。さっさと言えば。」
「…………おまえは、何がしたいの?あたしに何を望むの」
「だから言ってるじゃん。」