第9章 誕生日
例えば。
自分の子供ですらストレス発散の道具にしかしてこなかったクソ親とか。
例えば。
稼いだ金巻き上げて全部競馬でスるようなバカ親とか。
例えば。
金さえ払えばどんな扱いしても許されると思ってるクソみたいなやつら、とか。
あ。
やべ。
眩暈する。
つか。
吐く。
思い切りのざえたあと、トイレで良かったーなんて安堵しつつ、すっかり萎えた。
深呼吸ひとつ。
トイレを後にした。
…………あれ。
莉央ちゃん、いない。
莉央ちゃん。
あれ。
まじいないんだけど。
「…………」
一瞬。
血の気が下がる最悪な事態を想像して、自分のスマホをみれば。
以外にも近くに莉央ちゃんがいる。
「…………ぇ、柳瀬何」
向こうから走ってくる莉央ちゃんを見つけて、思い切り抱き付けば。
腕の中で莉央ちゃんの体温が上がる。
「…………あー、ごめん。飲み物、買って来てて。大丈夫だよ、危ない目にあってないよ、誰にも怖いこと、されてないよ」
意図を察するの、最近早くないですか。
しかもまた頭撫で撫でするの。
それほんと落ち着くからやめて欲しい。
また変な気起きちゃうから。
「柳瀬、気持ち悪い?」
身体を離した途端にすぐ気付いちゃうの、ほんとなんでかなこの子は。
「顔色悪い。…………変なこと思い出しちゃった?」
背伸びして。
小さくて柔い掌を両頬へと伸ばし。
莉央ちゃんが心配そうに上目遣いする。
「大丈夫だよ。莉央ちゃん見たら治った」
そのままコツン、て額くっつければ。
顔を真っ赤にして莉央ちゃんが勢いよく離れていった。
「柳瀬は、コーヒーでしょ?はい。冷たいよ」
「ん、ありがとう」
照れるとぶっきらぼうになるとこも好き。
誰よりも優しいところも好き。
毎秒毎秒、違う莉央ちゃんを好きになる。
「ご飯行こっか、莉央ちゃん」
「柳瀬からご飯食べようとするの、珍しいね」