第9章 誕生日
立ち上がったふたりの後ろへ回り込み、片方の腕を後ろ手に捕まえた下から、片方の背中へと銃を押し当てた。
「お兄さんたち、ちょっっとあっちでお話しいいですか」
そのまま2人まとめてトイレへと連れ出して。
腹へと一発思い切り蹴り入れた。
ついでに。
銃口を口の中へと押し込めば。
恐怖に引き攣るくらいなら初めからやんなきゃいいのにな。
「こ、こんなとこで撃てるわけ…………」
「…………」
挑発なんかしちゃうから相方余計引き攣ってんじゃん。
「試してみる?」
相手の力量も知らねークソガキが、邪魔してんじゃねぇし。
カチャ、て。
引き金に指を掛ければ。
空いた左側から男が襲いかかってきて、左手で、思い切り首元掴んで床へと打ちつけた。
「…………遅ぇんだよ」
ぐ、て。
頸動脈を親指で圧迫するだけで、ほら、苦しい。
さらに親指に力を入れて圧迫すると、喉から小さく空気の抜ける音、と、唾液が床へと落ちた。
おちる。
そう感じた瞬間手を離し、銃口を向けていたやつの顔面を、銃で思い切り殴った。
「あの人俺のなんです。もうあの人に構わないでもらえます?」
映画館入った途端これだもんな。
そりゃ莉央ちゃん、こんな密室警戒するわな。
ふぅ、て。
一息ついて。
汚い手を洗ってから席へと戻れば。
明かりが落とされていた。
「ごめん、間にあった?」
「…………」
?
あれ。
ちゃんと血とか、落としたはずなんだけど。
いやこんな暗闇じゃ見えないか、そもそも。
「莉央ちゃん?」
「…………なんでもない」
代わりにぎゅ、て抱きついて莉央ちゃんの手が俺の手に絡まった。
「?」
「…………」
よしよし、て。
頭を撫でる莉央ちゃんを見下ろすけど。
視線はすでに、始まった映画へと向けられてる。
「…………」
莉央ちゃん、気付いてる?
俺がしたこと気付いてる。
気付いてて、何も言わないのか。
黙って視線を映画へと向けながら、莉央ちゃんの手を強く握りしめた。