第8章 幸せ
例えば。
柳瀬が闇に堕ちて、とゆーか引き込まれてぶちキレて暴れて暴言吐いて。
俗にゆー暴走したとしても。
暴走しただけなら。
昨日みたいに引き戻すことは出来ると思う。
ただ。
その先に。
精神を壊してしまったなら。
精神を壊して深い穴(闇)の中へと堕ちてしまったなら。
きっともう戻ってくることは出来ない。
そんなことを思った。
「…………」
頭の後ろを、何かを探るように触れるもの。
その存在を認識すると同時に意識が浮上した。
「ごめん、起こした?」
「…………うん、何」
「昨日ぶつけてたから、傷とかなってないかなって」
「平気だったでしょ」
「うんでも、たんこぶ出来てる。…………ごめん」
「こう見えてけっこう頑丈なんだよ」
「…ここも。女の子なのに、痕残んないかな」
「大丈夫だよ、かすり傷だもん」
「…………」
あーあ。
自責してるな、これ。
「柳瀬」
柳瀬の腕の中から抜け出て、頭一個分上にいる柳瀬へと顔を向けた。
「ん」
「ぇ」
「ん!!」
唇を突き出して目を閉じると。
少したった、あと。
遠慮がちに唇が触れた。
「いいよ、最終的に暴走止まってくれたし」
「だって莉央ちゃん、あんな誘い方されたら誰だってっ。あんな、理性なくしてる男あんな誘い方したら駄目だよっ」
「柳瀬には効いたでしょ」
まぁ。
ゆーて。
めっちゃくちゃ満身創痍ではありますけどね。
「…………ブラック雅くんは?」
「…………寝てる」
「そっか」
「莉央ちゃん」
「ん」
「…………大好き」
「あたしも大好き」
柳瀬の腕の中、ぎゅうって抱きついて顔を埋めた。