第5章 ♡心も体も恋に堕ちて

「えらい派手にイッたな」
「……」

　全然甘くない。ものすんんんごく意地悪だ。
　顔を反対方向に向けて無言の抵抗を試みる。そんな私すら愛おしいとでも言うように抱きついてきた宗四郎くんの肌がしっとりと汗ばんでいるのを感じ、下腹部がきゅんと疼いた気がした。

「疲れたやろ？　今日はここまでにしよか」
「──え？」
「十分ご褒美ももろたでな」
「私の……は、初めてって言って」
「初めて体許してもらった男が僕になったし、初めてイキ顔見せてくれた。ココ舐めたんやって僕が初めてや。──十分過ぎるやろ？」
「あ……でも」

　ちらり、と視線を下げれば彼曰く“私がそうさせたモノ”が視界に入る。私の太ももに当たらないようにはしてくれているようだが、男の人のことを知らない私でもわかる。どう見ても大丈夫じゃなさそうだ。
　私の言わんとしたことを察した宗四郎くんは上半身を起こし、わしゃわしゃと私の頭を無造作に撫でた。まるで気にすんな、とでも言っているかのように。
　ああ……いつだってこの人はそうだ。どんなときでも自分の気持ちよりも私の気持ちを優先してくれる、優しすぎる人。

「こんなんどうとてもできる──」
「……やだ」

　そんな優しすぎる人に優しくする人は、私でありたい。

「ちゃん？」
「私だけ気持ちよくしてもらったの、やだ」

　ごくり、と彼の喉が大袈裟に上下したのを見逃さず、今が好機とばかりに今度は私が追い込む番。上半身を起こして宗四郎くんの首に腕を絡め、啄むようにキスをする。
　我慢させてごめんね。いつも気遣ってくれてありがとう。でもね、私にくらいもっとワガママでいてほしいの。

「っ、ちゃん……」
「何？　宗四郎くん」
「ちょっ、触らんとって……僕これでもけっこう我慢しとるで」
「我慢する必要、ある？」
「あるやろっ。ちゃんに無理させたない」
「無理してない」
「そやかて……」
「無理してるのは宗四郎くんでしょ」

　そう断定付けて彼の顔を覗き込むと珍しく目を白黒させて、動揺が隠せない様子。その行動が肯定と同義だって彼もわかっているからか、私が宗四郎くんの下着の中に手を入れ、すりすりと怒張したモノを撫でるのをたしなめることすらできていない。わずかばかりの期待を孕んだ熱っぽい眼差しを私に向けている。