【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第5章 ♡心も体も恋に堕ちて
「待って、待っ……」
「んー?」
「ふっ、う……」
「あーーー何でそんな可愛いん? 反則やろ」
「そんな目で、見ないで」
「それは無理な相談ってやつや。もう僕の、こんななってしもたんやで?」
ちゃんのせいで。と耳元で囁かれながら視線を少し下に下げると嫌でも目に入る彼の下腹部。スウェットの一部が大きく膨らんでいるのが見え、思わずごくりと喉を上下させる。
宗四郎くんが反応している。私がそうさせたんだ。その事実が恥ずかしいのにそれ以上に嬉しくて、心臓が鷲掴みされたようにぎゅーっと苦しくなった。
やっぱりこの気持ちを言葉にする術を持っていなくて、彼の首に腕を回してぎゅっと抱きつく。額をぐりぐりと彼の肩口に擦り付ければ嬉しそうな笑い声が横から聞こえ、温かくて優しい両腕に閉じ込められる。抱きしめられているだけでこんなに幸せなのに、私このあとどうなっちゃうんだろう。
「寝室まで連れてってええ?」
「……うん」
「腕、そのまま僕の首に回しといてな」
言うが早いか行動のが早いか。私をひょいと軽々持ち上げた宗四郎くんは俗に言うお姫さま抱っこと呼ばれるもので、私を寝室まで運んでくれる。正直に言うとめちゃくちゃ恥ずかしいが、立ったら立ったでぺんぎんのようによちよち歩きしかできなかっただろうから……今は逆に良かったのかもしれない、と心の中で一息つく。
ああ、それにしても私はなんてえっちでけしからん恋人を持ってしまったんだ。前世の私はあり得ないほどの徳を積んだらしい。そのせいで心臓がいくつあっても足りないのは困ったものだが。そんなお門違いな私の妄想は柔らかなベッドの感触にかき消され、すぐ現実へと戻されるはめになる。目の前の宗四郎くんは口元をもぞもぞと忙しく動かしては何かに堪えるようにきゅっと口を結んだ。
「僕のベッドにちゃんがおるぅ」
「……変態くさい」
「せやかてこんなんさあ興奮すんな言う方が無理な話やろお……」
無性に感極まっている宗四郎くんは両手で自分の顔を覆いながら天を仰いでいる。フーーーと海より深い息を吐いた宗四郎くんは私の顔の横に両手をつくと、覆い被さるようにして私を見下ろす。ほうと息をついた彼は恍惚とした表情で私を呼び、熱のこもった視線を向けており……とても扇情的で美しいな、と思わずまじまじと見つめ返してしまった。
