第30章 解散(かいさん)
しのぶ「はっはっはっはっ←息が弾む
嘘だ!
嘘だ!!
嘘だっ!!!」
涙を流しながら
来た道を引き返し駆け戻っていった
視界が狭まり、暗く白ばむ
しのぶ「お願いだから…嘘だと言って!!!!!」
天を見上げて叫ぶ
しかしなおも…雨は止まず、降り続ける
本当だよ…というお館様の言葉が想起する
しのぶ「なんでよ…っ
なんでっ…?
これまで血反吐を吐きながら
必死に走り回ってきたのに?
やっと全部終わって…解放される所だったのに…?
やっと……やっと………これからだって…思って、たのに?
ずっと…ずっと、頑張ってきたのに……!
この…仕打ちっ!!
ふざけるな!!
なんで!!なんで!!!
そっち都合なのよ!!!!
馬鹿野郎お!!!!!!!!」滂沱
しかし……何も変わらず、雨が身を打ち続けてゆく
恵土『どうか…しのぶの身を守ってくれますように(微笑)
^^』
胸にそっと手が触れる感触がした
この白い羽織を、贈ってくれた時の感触が……雨を通じてした
しのぶ「絶対死なせない…
逝かせない!!
絶対に!!
絶対にっ!!!!」
必死に走って、走って
転んで
立ち上がって
何度も立ち上がって
咽び泣きながら走った
何度も師匠と一緒に通った道
しのぶ「師匠…待って」じわっ
恵土『^^』手を振る
しのぶ「逝かないでっ
私…まだなんにも出来て(返せて)ない!!!」
泣き叫びながら
想い出ばかりが、走馬灯のように何度もよぎる
よぎっては消えて、零れ落ちてゆく
まるで雨粒のように――
しのぶ「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」慟哭
それを振り払うように
頭を振り
必死に走った
何事かと振り返る人々の視線を掻い潜って
雷の光を浴び
慟哭か稲妻か、どちらかもわからぬほど震え
その振動が、心を、身体を、大きく揺さぶる
腕を振り
咽び泣き
嗚咽に飲まれ
それでもなお走った
最愛の人の元へ――
しのぶ「死んじゃ…嫌だっ
置いてかないでっ」
その場に崩れ落ちそうになる身体を、心を、必死に奮い立たせる
雹が身を打ち、押し倒す
消え入りそうな声で、体で、必死に直走った
しゃっくりと嗚咽を絶えず上げながら
やっと御屋敷に辿り着いた頃には……涙と雨と夕立の雹でぼろぼろになっていた