第26章 天変動地(てんぺんどうち)
恵土「……何故知りたい?」
無惨「その疑問に答えれば教えてくれるのか?」
恵土「……(本当なら話す義理は無い)
ああ(だが、少しでも長くこの場に留める!」
無惨「…なら答えよう
我々は何故生まれ落ちてきたのか?
何故癌なのか…知りたい
それだけだ
何故九百七十六垓人が生贄にならねばならなかったか…
それを知らねば防ぐ術など出来はしまい」
恵土「……それ…本気で、言ってるのか?
(改善しようと?」
無惨「ふん
それ以外に何がある?」
恵土「それ以外に目的は無いんだな」
無惨「そうだ」
恵土「わかった、話す
癌が生まれる要因…それは、人々の中に巣食う悪意無き正義だ」
無惨「正義…?」
恵土「ああ
正しいと思い込むこと
人を度外視すること
それを犯せば、己が犯してきた全ての罪が牙を剥く
自覚無き、悪意無き正義が…己が身を食い殺し滅ぼす
自らの罪が意思を持ち、抱き
「自らに都合良く捉えて欲しい、自らは悪くない」
その偏った願いを叶える為、全てに自らの罪を切り分けて分化させ、植え付けることで
そういう認識しか、己に対して出来ない存在…つまり癌へと変異させる
しかしその行為は罪に該当する
罪をどれだけ切り分けてばら撒いたとしても
罪は肥大化する一方で減りはしない、寧ろ増す
そしてそれが…不浄そのものであり、世界の実在化を不可能へと変える
それが耐え切れないほどに与えたのが主犯格の癌だ
ここまではいいか?」
無惨「ああ…私の知っている史実通りだ」
恵土「つまり…それが齎す全消滅
全ての消滅を防ぐには、癌の罪を植え付ける行為への無力化、全ての癌化を防ぐことに直結している
それが……私の」
無惨「命と自我と記憶の消滅だ
対価として差し出したものは二度と戻らない
たとえ再生したとしても一部のみ異なる」
恵土「知ってたのか…」
無惨「ああ…
そして…癌一同が全て死に絶えた後に再生が可能となる
罪が無い者が罪の無い者を庇ってのものだから
逆に罪のある者がした場合、関係なく消滅する
なるほど……
つまり…我々は死滅する他無い
ということか?」
恵土「………………
そうだ
嘘を付きたくないから正直に言うと…な」
無惨「ふむ……」
恵土「何を考えているんだ?
全くわからない)…」
冷や汗混じりに警戒し動向を見逃すまいと真剣に見やる
