第1章 1
キミは…カゴの鳥──。
外の世界を知らないのなら、
俺が見せてあげよう。
♪♪♪
「あ、見えてきた~!!」
揺れる馬車の中、幌の外を見て一番最初に声を上げたのは、隣に座っとったラルゴやった。
「お前…寝てたんやないんか」
「今起きたー」
「へぇー…あれが…」
「えぇ、あれが私達の街、カデンツァです」
俺の前に座るダンテが呟くと、馬を操って馬車を走らせとる男が誇らし気に答えた。
「カデンツァ…」
「人口は約10万人程の街です。ご覧の通り、海の近くの街なので主に漁業を生業としてます」
男がカデンツァについて説明しとる間にも、街は近付いてくる。
「見えますか?」
男の声に俺らは街を見る。
「あの高台にある建物。あれがアクロポリスです」
「おー!!あれか!!」
「あれの前にあるのがもしかして…」
ダンテの隣に座るレグが訊くと、男は頷いた。
「あれが皆さんに音を奏でていただく所・ガイアミュージアムです」
「スゴいなー!!こんな遠い所からでも見えるなんて、めちゃくちゃデカいんやろなぁー」
レグの隣、男に一番近い所に座るドルチェが、額に手を当てて突き刺すような日光を遮りながら、感嘆の声を上げる。
「あ、先に一言、言っておきますね」
「ん?何や?」
「あのガイアミュージアムの後ろに建つアクロポリスには、神聖なる神殿があります。そこには我が街・カデンツァを守ってくださる女神様がおられます。……私達は親しみを込めて『姫様』とお呼びしていますが」
「姫様?」
えぇ、と男は頷く。
「今年19になられる、それはお美しい姫様です」
それを聞いてドルチェの目が輝く。
隣に座るレグの目も同様に。
それを悟ってか、男は振り向いた。