第6章 新たな日々、非合理的な感情
次の日。
「おはようございます!」
「「「「おはよ〜!」」」」
職員室に入ると、いつも通りの挨拶が返ってくる。
――なのに、胸の奥だけが少し落ち着かない。
自分の席の隣には、すでに相澤が座っていた。
「お、おはようございます…!」
相「あぁ、おはよ」
短い返事。昨日と何も変わらない声音。
(……恥ずかしいの、私だけなのかな)
そう思った瞬間、相澤の視線が一瞬だけ逸れた。
それだけで、胸がちくりとする。
マ「おはよォ〜!今日もかわうぃ〜ね!」
ミ「〜!昨日はちゃんと帰れた?オオカミに食べられてない?」
「オオカミ?あ、昨日は消太さんが日本酒飲みに連れてってくれました!ずっと飲んでみたかったから嬉しくて。すごく美味しかったです!」
マ&ミ「…え?」
相「…………」
一瞬、空気が止まる。
ミ「…相澤くん?どういうつもりかしら?」
マ「おいおいおい相澤ァ。それ、聞き捨てならねェなァ?」
相「……別に」
「私が飲んでみたいって言っただけで!おすすめのお店に連れてってくれただけです!」
ミ「で?ちゃんと送り届けたんでしょうね?」
相「タクシーで」
「っ……」
玄関先のことが一瞬フラッシュバックして、頬がほんのり熱くなる。
マ「…ふーん」
マイクはじっと相澤を見る。
マ「俺ァ誘われても行ったこともねェ店に、は行けるんだァ?」
相「……うるさい」
マ「いやぁ?つーかさぁ、好きにならない方が無理なんじゃねェの?」
冗談みたいな口調。
でも、目は笑っていない。
相「…香山先輩、そろそろ始業です」
ミ「はいはい。でも覚えときなさい?はみんなの宝なんだから」
マ「そーそー。みんなのだよなァ?」
冗談めかして言いながら、マイクはにだけ向けて、少し柔らかく笑った。
始業のチャイムが鳴り、仕事が始まる。
新年度に向けてやることは山ほどあって、時間はあっという間に過ぎていく。
――それでも。
相澤は、あの日のことに一切触れなかった。
まるで、本当に何もなかったかのように。
それが、の胸を余計にざわつかせた。