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【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第4章 別れの日、歩き出す先


相澤の背中が角を曲がって見えなくなってから、しばらくその場を動けなかった。
声をかけられたのは、ほんの数分だったはずなのに、体の奥に溜まっていたものが少しだけ沈んだ気がした。

(……誰だったんだろ)

名前も知らない。
顔だって、ちゃんとは見ていない。
それなのに、あの沈黙だけが、今のには必要だった。

母がいなくなってから、時間の感覚がおかしい。
昨日まで隣にあった日常が、音もなく崩れて、気づいたら世界が一段低くなっていた。

-------母「お酒、買ってくるね」

そう言って笑った母の顔が、何度も浮かぶ。
20歳になったら一緒に飲もう、なんて、そんな約束。
こんな形で最後になるなんて、思うわけない。

事故だと説明された。
不運だったと、誰もが言った。
それでも、胸の奥ではずっと何かがざらついている。
納得できない、でも掴めない。

縋りたかった。
誰かに、名前を呼んでほしかった。
でも、できなかった。

私はずっと“支える側”だったから。

立ち上がって、ゆっくり家に向かう。

母のいない家は、思っていたより静かで、思っていたより冷たかった。

灯りをつけて、靴を脱いで、ベッドに倒れ込む。
泣こうと思えば泣けたはずなのに、涙は出なかった。

(誰かに、会いたい)

理由は分からない。
ただ、ひとりでいるのが、これ以上怖くなった。

約束の日が近い。
あの公園で、待っている2人がいる。

爆豪と、緑谷。

きっと、あの子たちは変わっている。
でも、変わらずに迎えてくれる気もした。

その予感だけを胸に、目を閉じる。
眠りに落ちる直前、母の声がした気がして、は小さく息を吸った。

(……明日も、生きよう)
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