第3章 幼き約束、始まりの日
緑谷、爆豪も着実にと成長していった。
中学に上がると、2人の間には余計に溝ができた。
同じ夢を見ているはずなのに、立っている場所が違う。
口に出さなくても、それははっきりと分かるほどだった。
だが2人の心の中には、同じ人が常に居た。
忘れられない人。
何年経っても色褪せない、子供の頃のことなのに、未だに胸の奥に残り続けている存在。
それが“恋”だと知ったのは、がいなくなってから、ずっと後のことだった。
爆豪は、強くなりたい理由を誰にも話さなかった。
ただ前に出て、勝って、圧倒する。
それだけが答えだと思っていた。
けれど、ふとした瞬間に思い出す。
自分よりも少し高い位置から笑っていた、あの人の顔を。
「守ってやる」と叫んだ日の約束を、今でも胸の奥で燃やし続けていた。
爆(早く、強くならねェと)
その想いは、焦りにも変わった。
一方、緑谷は違った。
の言葉や仕草を、何度も思い返してはノートの余白に書き留めた。
優しかった声、手を当ててくれたときの温度。
自分を「大丈夫」だと言ってくれた、あの日。
緑(また会えたら……ちゃんと、胸を張って話したい)
その願いが、緑谷を前へ進ませていた。
2人はに会える日を、心の支えに中学生活を送った。
そして緑谷は、無事個性を授かった。
緑(……ちゃん、驚くかな)
どんな時も、真っ先に思い浮かんだのはの顔だった。
誰よりも先に、伝えたかった。
そして2人とも、雄英高校に受かった。
爆(……あと一ヶ月。はよ、報告してぇ……)
約束の日は近い。
それぞれ違う形で抱いた想いを胸に、2人は同じ春を待っていた。
そのすぐ先に、の世界が静かに、しかし決定的に変わる夜が訪れることを、まだ誰も知らなかった。