第1章 Z=16 医者×魔導士=多忙な日々
「それじゃ、たまには付き合ってあげようか?」
「えっ」
今度はルーチェが驚き、思わず加速させてしまう。
ゲンはうぎゃ、と叫ぶと、ルーチェは慌てて修正した。
(フーガ・プリシギア)
心の中で風力を調整する魔導を唱えると、加速は落ち着き、飛行速度はゆるやかになった。
ルーチェとゲンはふぅ、と一息をついた。
「ご、ごめん。舌、噛んでない?」
「だ、大丈夫・・だよ…。」
ルーチェは再び安堵のため息をつく。2人の呼吸が落ち着いたところで、ゲンがさっきの続きだけど、という。
「毎回、は難しいけど、たまになら付き合うよ。こんな綺麗な星が見れるなら、空飛ぶのもわるくないしねぇ。」
「……ほんと?」
「うん。ただし、お代はたかいよ。」
「…出世払いで。」
冗談を言い合う頃には、一通りの探索を終え、ゲンのテントの近くにゆっくりと降下させていく。
上空は冷たい風が吹いていたが、地上へと近づくにつれ、夜の空気が少しだけあたたかく感じた。
2人は、ストン、と地面に足がつくと、箒から降りた。
「ありがとう、ゲン。」
「こちらこそ。綺麗な星空を見せてくれてありがとう。おやすみ。」
そう言うと、ルーチェの頭をぽんぽん、と撫でる。
撫でられた方は当然、照れくさやら、なんやらで顔は赤いまま、けど、表情は変わらず、一言いった。
「大人、なんだけど…」
「めんご〜。ルーチェちゃんがあまりにも可愛かったからつい、ね?」
そう言われればさらに恥ずかしかったのか、おやすみ!と少し強めの声で告げ、その場を後にするルーチェだった。
.