第1章 光を厭い 光に憧る
白失の経歴を読んだ時もそうだが、目良から聞いた話は決して他人事で片付けられるものではなかった。
“犯罪者の子供”
それはホークス自身にも当てはまる。
父は連続強盗殺人犯、母はそんな父を匿い、その個性で警察から逃れさせた犯人蔵匿と犯人隠避。
運良く公安に見出されて素性を書き換えてもらえたからこそヒーローとして活動できているが、もし公安に拾われていなかったら、ヒーローを夢見ることすらできなかったかもしれない。
それだけに彼女を放っておく訳にはいかなかった。
表情や声色に変化がなく感情が読めないのは、心を閉ざさなければ自分を守れなかったからだろう。
周囲には味方がおらず、どこにいてもいじめを受け、心休まる居場所がない。
そんな環境で普通の感情を持ち続けていたら、とても耐えられない。
今思うと、最初に見たあの表情は普段感情を出さない彼女が大きく動揺した瞬間だったのでは?
一体、何が彼女の心を揺さぶった?
……あの時、あの場で彼女の日常から最も外れていたのは俺だ。
目良さんは彼女がヒーロー好きだと言っていたのにあの顔。
ヒーローを生で見て驚いた、感激したという感情ではない。
だったら何が……?
公安に顔を出した時にはほぼ必ず声をかけているが、最初の時のような感情の変化は見られない。
むしろ困り事はないとまで言われた。
周囲を頼れない人間は追い込まれているサインを出せず、誰にも知られず自分で抱え込むことが非常に多い。
彼女もそういう人間の1人だ。
本当に困っていることはないのか、
彼女自身から聞き出せないのなら、少し強硬手段になってしまうが、剛翼を使おうか。