第1章 光を厭い 光に憧る
さすがにあまり込み入った話はできず、昼休憩が終わるからと会話を打ち切られ、白失は去っていった。
それを見送って踵を返すと、横から目良が来るのに気づく。
「あ、目良さん、どもっス」
「忘野さんと親しいんですね」
「そんな風に見えました?」
「彼女があんなに会話しているところは見ないので……何か気になることでも?」
「最初に俺を見た時の顔が他の職員とはまるで違ったんですよねぇ、皆歓迎してる顔だったのに1人だけ……それが引っかかってちょっと見てるんですけど、部署でも浮いてるっぽいですし、公安に入った経緯も特殊でしたし……あ」
口が滑った。
反射的にジャケットの襟で口元を隠すが、もう遅い。
「……今の、処分モノです?」
「聞かなかったことにしてあげます。君のことですから、そこまで知っているということは、彼女の学校や施設でのことも調べてますね」
「え?」
目良の口から思いもよらぬ言葉が出てきて、ホークスはわずかに瞠目する。
「今から言うことは聞かなかったことにしてください。忘野さんは私が勧誘……といいますか、公安に来るよう誘導しました」
「目良さんが?どうして?」
「放っておけば危険だと思ったからです。彼女は学校や施設で傍目に見える程のいじめを受けていました」
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彼女がいじめられている現場を見たのは本当に偶然だった。
とある児童養護施設近くの公園で4人の少年少女が1人の少女を追いかけ回し、叩いていたのだ。
遊びにしては行き過ぎた行為……
これが普通の幼稚園や保育園、あるいは学校だった場合、教諭が飛んできてこう叱る。
『他の子に優しくできない子はヒーローになれない』と。
だが、ここにはそういった職員はいないようだった。
少し気になって施設職員に伝えてみたものの、よくある子供同士のヒーローごっこだからと返された。