第15章 ・決意
ゾロの脳裏に『ゴーイング・メリー』号の姿が浮かんだ。
仲間であるウソップの村に住む、カヤと言う名の、病弱な少女からの贈り物。
それは、麦わらの一味に取って初めての大きな船だった。
ボロボロになりながら、最期迄一味の為に走り続けた船。
愛船を失った記憶が、ゾロの声を重くする。
しかしルシファーは、口端を上げてその懸念を拭い去る。
「ゾロ、忘れないでくれ。僕達は魔神族であり、魔王族だよ。そんな物理的な心配は『魔術』でどうにでもなるんだ。ええと……」
ルシファーは念動力を使い、デスクの引き出しからマガジンファイルを取り出し、手元に移動させた。
パラパラと手早くファイルを捲り、二枚の古びた羊皮紙を取り出す。
その羊皮紙には、七十二柱は序列四十一番目の魔神フォカロルと、序列四十二番目のウェパルのシジルがそれぞれ描かれていた。
「フォカロルは海と風を支配し、海難事故を起こす魔神……ウェパルは海を支配し、船を導いたり破壊する力を持つ魔神だ。このシジルを持つ事で海難を懐柔し、避ける事が出来る様になる。これに僕のシジルと腐食防止の呪文を書き加わえるのさ」
ルシファーは胸のポケットからペンを取り出し、羊皮紙に自分のシジルと呪文を描き込むと、紙面が淡い青い光を放った。
「これをサニー号の……あのライオンの頭に食べさせるんだ。それだけでいい」
「……あぁ?サニーに食わせるって、どういう意味だよ。あいつは生き物じゃねえぜ?」
「戻れば判るよ……いや、君はもう判っている筈だ。あの船には『魂』が宿っている事をね」
「……ああ、確かに……そうだな」
ゾロは少し考えてから、口端を上げ、頷いた。
メリーの時と同じ……サニー号もまた、只の木材の塊ではないのだ。
二年前に別れを告げたゴーイング・メリー号。
短い間だったが、仲間達に大切にされていた船。
大切にされたものには『魂』が宿る。
そしてサニー号……その船にも、確かに『魂』が宿っていた。
仲間のフランキーが誠心誠意込めて造り上げた、現在の愛船……サウザンド・サニー号にも、確かに『魂』は宿っているのだ。
書き終わると、ルシファーは黒い封筒に羊皮紙を入れて、ゾロに手渡した。
「ありがとうな、ルシファー。これでサニー号は安泰だ」