第15章 ・決意
十六才の誕生日……剣の師であるコウシロウから、その時酒を教わった。
ゾロが生まれ育ったシモツキ村は、東の海……イーストブルーの中でも、世界政府も目を付けない辺鄙な場所にある。
そんな事もあって、酒や煙草等の嗜好品に関しては、これと言って厳格な決まり事はない。
ゾロに取って、コウシロウは剣の師でもあり、勉学の先生でもあり、そして酒の先生でもあった。
話を聞いたロキは、思わず口端を上げる。
「Brother……お前のお師匠さん、なかなかのNice Guy……と見たぜ」
「何で……会った事もねえのに判んのかよ」
「判るさ。お前見てりゃ判る……まあ、お前みたいにガサツでぶっきらぼうじゃねえんだろうけどな」
「うるせえ」
そう言って悪態を吐くゾロの脳裏に浮かぶのは、目を細めて優しく微笑むコウシロウの姿。
ヤンチャな少年だったゾロは、剣の師を困らせた事はあったが、怒鳴られた事や殴られた事は、一度もなかった。
何時も心静かで、穏やかな師であった。
ただ、一度だけ……泣いている顔を見た。
ゾロが一度も勝てなかった相手……娘のくいなが死んだ時だった。
彼は手にしていたグラスを、一気に煽る。
「……どうした?Brother……先生に会いたくなったか?」
「……あ?なんでそんな事聞く?」
「いいや、何となくよ」
「そうか……」
ゾロはそう言って、ふっ、と笑った。
くいなは、確かに強かった……本当に強かった。
だが、強かった筈の彼女の命は儚く消え、その魂は怨念の塊と化した。
そして、彼女に一度も勝てなかった剣士……魔神族と化した三刀流の剣豪の手によって、完全に消滅した。
後悔はない。
ただ……悲しみに暮れるコウシロウの姿が、少しだけ胸に刺さった。
三刀流の剣豪は、ほんの少しだけ重くなったその場の雰囲気を変える為、一つ溜息を吐いてから、前から気になっていた事を口にする。
「そう言えばよ……なあ、ロキ。お前程の『ロックスター』が街を歩いてて、誰もサインを求めに来ねえのは……実は人気がねえのか?」
突拍子もない質問に、ロキは堪え切れず思わず噴き出し笑い始めた。