第15章 ・決意
「その通り……だから、おかしな動きをしている奴や、その手下のニンゲンを密かに監視しているのさ。勿論、仲間のニンゲンにも手伝って貰ってるのさ……この世界の平和があってこそ、おれたち魔神もこの世界を楽しめるんだからな」
ロキはゾロの対面に腰掛け、掘り炬燵に足を入れながらメニューを手に取った。
「この世界には、今でも『宗教』や『信仰』ってモンが存在する。寛大な閣下は『信仰も自由』と言われてな、四文字の奴を信仰する事も咎めなかったんだ……だが、それをいい事に、誰彼構わず攻撃したり、街を破壊したり、無理矢理入信させようとしたりするのはお門違いだろ」
ロキはメニューに目を通しつつ、静かな口調で話し続ける。
「閣下が『力による支配も、ルールを作る事もまた自由』……と仰られているのは、お前もご存知だと思うが……先の戦いで奴の知恵を食らい事象となられ、宇宙そのものから『理』を授かってから、閣下は少しお考えを変えられてね。四文字の奴の様な強制的な支配でもなく、血腥い混沌とした自由でもない……それ迄になかった『ニンゲンと魔神族の世界』を実現しているのさ」
そう言いつつ、ロキはゾロにメニューを差し出した。
ゾロはそれを受け取りながら、少年の姿を取った高潔な悪魔の王を思い浮かべる。
「……あいつ、心底人間が大好きなんだな……しっかし、四文字の残党は、人間を力ずくで従わせるって事しか考えねえのか……神って名乗ってる奴もその手下も、本当にロクな奴いねえな……」
ゾロは静かに言葉を吐き捨てた。 そして、個室の片隅でぼんやりと灯りを放っている赤提灯に何気なく目を遣ると……その赤い光に紛れ、不意に血の様に赤く染まる青い星が、音もなくゾロの目の前に一瞬、現れた。
見聞色の覇気と魔力が見せた、青い星……影の星の、それ程遠くない未来。
赤提灯を見詰めるゾロの眼光が、一瞬鋭さを増す。
そんな彼を見たロキは、真顔で頷き、そして緊張を解す様に静かに訊ねる。
「……さて、Brother。お前、清酒が好きだって言ってたよな?」
「ああ……清酒の、辛口だ」
「OK、それと刺身の盛り合わせでいいか?」
「酒が旨けりゃ何でもいいよ」
「心配すんな、ここの酒は上等なものばかりだからな」
ロキは笑いながら、手元にある呼び出しボタンを押した。