第15章 ・決意
夜のシブヤを楽しみつつ、歩く事十数分。
魔界へ戻る時間は午前一時。
彼等はそれ迄、居酒屋でゆっくりと過ごす事にした。
トウキョウの最後の夜を惜しむ様に、ロキ行きつけの店へと歩を進める。
喧騒の途絶えた路地裏。
赤提灯が辺りをぼんやりと照らすその店は『隠レ家』と言う名に相応しく、ひっそりと佇んでいた。
一文字『酒』と書かれた紺色の暖簾を潜り、古めかしい木製の扉を開ける。
……と、香ばしい焼き鳥の煙と、熟成された酒の匂いが、店主のしゃがれ声と共に客を迎え入れた。
「へい、いらっしゃい……おう、ロキさんじゃねえか! 景気はどうだい?」
「お陰さんで、まあまあだよ。マスターも元気そうで何よりだ」
「てやんでい!今日も安くしとくから、ゆっくりしてってくれよ!ロキさんとお連れさんの二名様、何時もの奥の部屋にご案内!!」
威勢の良い店主の対応に、ゾロは思わず苦笑した。
活気ある調理場を横目に、給仕に奥の個室へと案内される。
ロキはその給仕スタッフ……人間の姿に化けた部下と、すれ違いざまに声を潜め言葉を交わす。
「……なるほど、まだ動きはないか。引き続き監視を続けてくれ。くれぐれも深入りはするなよ」
「はっ、承知致しました……」
そのやり取りを何気なく聞いていたゾロの眉が、微かに動く。
案内された個室は、畳の香りが残る掘り炬燵の空間。
案内したスタッフが下がると、ゾロはスニーカーを脱ぎ荷物を置いて、ドカッ、と腰を下ろした。
歩き疲れた足を床に投げ出し、掛けていたサングラスを外す。
「あいつ……人間じゃねえな。『魔力』を感じた……お前の部下か?」
低く呟いた剣豪にロックスターは驚きもせず、目を細めて笑った。
「流石だ、Brother……ここはタダの居酒屋じゃねえ……おれ達の『目』であり『耳』でもある場所なのさ」
「……奴等にもバレバレじゃねえかよ……大丈夫なのか?」
眉を顰めるゾロに、ロキは口端を上げて答える。
「それは大丈夫だ。お前も既に気付いてるだろうが、人間の姿で暮らしている魔神族は少なくないからな」
「ああ、それは判ったけどよ……『奴等』もニンゲンに化けてる……そうだろ?」