第14章 ・新境地
ロキは店員に礼を言うと、急いでゾロを追い掛けた。
先に店を出たゾロは、信号で立ち止まる。
横断歩道の信号は、赤。
トウキョウは、ゾロの世界では見られないもの、知らないもの、ないものばかりだ。
しかし、そこはやはり二十一才の若者である。
ホテルのエレベーター、ビルのエスカレーター、自動ドア、人感センサーライト……そして信号機。
最初こそカルチャーショックを受けたものの、何時の間にか、それがこの一日で当たり前の様に馴染んでしまっていた。
(あいつ等も、何時か連れて来てえなあ……ムチャクチャビックリするだろうな)
仲間達の驚く顔を想像しつつ、ゾロは独り、口端を上げた。
信号待ちをしている間にロキが追い着いた。
彼は軽くゾロに文句を言いつつ、次の目的地へと歩を進める。
ロキは歩きながら、ゾロに訊ねた。
「そう言えばBrother、訊くが……ギターでどんな曲を弾きたいんだ?」
「ああ、やっぱり、昨日聴いたあの曲だな」
ゾロは、あのギタリストが弾いていた曲を思い出す。
斬る様な音が、彼の頭の中を疾走する。
ロキは頷き、ニヤリと笑った。
「……やっぱりか。お前スラッシュ・メタルやりたいって言ってたもんな。じゃあ、奴等の曲はちゃんと聴いた方がいいぜ」
そんな訳で、ゾロとロキは程近くにあるCDショップへと向かう事にした。
自動ドアが開くと、程良い冷房の風とポップな音楽が彼等を包んだ。
ロキを見掛けた店員が、丁寧に挨拶をする。
店内に広がる沢山の棚に沢山の音源が並び、天井や壁には様々なアーティストのポスターが飾られていた。
と、その中に……やはり売れっ子スターなのだろう。
ロキのポスターも例外なく、堂々と貼られていた。
しかも直筆サイン入りである。
紫と黒を基調とした衣装に身を包み、ステージ上で熱唱している姿。
ゾロはそのポスターを眺めつつ、感心した様に言った。
「へえー……やっぱりお前、ちゃんとしたロック・ミュージシャンなんだなあ」
「おうよ!自慢じゃねえが……去年発売したアルバムは、ここニホンと欧米諸国じゃTOP20入りしてんだ。こう見えても、そこそこ売れてんだぜ?」
「……お前、本当は凄えんだな」
「……何だよ、その『本当は』って……」
ロキは苦笑しながら、目の前に並んでいるCDの列に目を遣った。