第14章 ・新境地
「そう言う時は、思い切って店員に聞いてみるもんだぜ」
「ああ、確かにそうだな」
ゾロは近くで商品チェックをしている男性店員を見付けると、低い声で訊ねた。
「……あー、ちょっと、聞きてえ事あるんだけどよ……」
「はい、いらっしゃいませ」
「……忙しいとこ悪りぃんだけどよ、このユニフォームの選手ってよ、何処のクラブにいるか判るか?」
ゾロは店員に、手にしているユニフォームを見せた。
店員は眼鏡の縁を触りつつ、爽やかに答える。
「ああ、この選手はイタリアのセリエAで活躍してる……」
流石はフットボール専門店の店員である。
サッカーの知識が豊富で実に流暢に、事細かく説明して行った。
ゾロは些か驚きつつ、その説明を黙して聞き続ける。
気付けば視線は何時の間にか、あのポスターに戻っていた。
「……この選手は、フォワードでありながらしっかり守備もしますし、小柄ながらジャンプ力も抜群。アグレッシブなプレー、勝利への執念から付けられたニックネームは『El Toro』……『雄牛』の異名を持つ、気迫と闘志溢れる選手なんですよ」
「El Toro……スペイン語か……確かに、こいつにぴったりの、いい異名だな」
「因みに、クラブのユニフォームもありますが、見て行かれますか?」
「そうだな、折角だから……ちょっと見てみるかな」
「かしこまりました。では、お持ち致しますので、少々お待ち下さい」
店員がゾロを案内したのは店の片隅にある小さなカウンター。
その横にはサッカー専門誌が並ぶ本棚があった。
ゾロはその中から、適当に一冊手に取る。
『WORLD FOOTBALL - 特集・欧州サッカー 2025-26シーズンの展望』……数人の選手達が表紙を華やかに飾っている。
適当にパラパラと捲りつつ、時間を潰す。
そして……待つ事数分。
「お待たせ致しました」
店員は戻って来るなりそう言って、カウンターテーブルにユニフォームを広げて行った。
「これが、今シーズンのホーム、アウェイ、サードユニフォームです」
三着全て『背番号10』である。
ゾロお目当ての選手は、クラブでは『背番号10』を背負い、カピターノ……キャプテンを務めている男だった。
広げられたユニフォームを目にしたゾロは、小首を傾げつつ店員に訊いた。