第8章 ・記憶
その声が消えたと同時に、一同、一斉に声を上げた。
「異議なし!!!」
魔王族も、その護衛隊も、その場にいる全員が、そう答えたのである。
ナホビノも人修羅も、それが当然の様に笑顔で彼を見ている。
人間代表としてここに来ているライドウは、学生帽の鍔を軽く押さえて一つ頷き、その足元にいる黒猫は、ニャア、と一つ大きく鳴いた。
その嘘偽りのない仲魔達の返答の声は、大広間に大きく響き渡る。
それはゾロの魂にも、確かに伝わって行った。
その様子にサマエルの心と魂は激しく揺さぶられ、カディシュトゥは涙を流した。
大魔王は、再び仲魔達の顔を一名一名、確かめる様にゆっくりと見渡して行く。
静まり返る大広間に、彼の声が響いた。
「……では『継承の儀式』の場へ移ろう。皆、明星のバルコニーへ……」
ルシファーの穏やかな声が、場の空気を一変させた。
皆、一斉に席を立ち、大魔王の指示を待つ為に起立する。
何も聞かされていないゾロは戸惑い、思わずルシファーに訊ねる。
「おい、ルシファー……一体何が始まるんだ……?」
「正式に死皇帝となった、君の継承の儀式だよ。ゾロ、僕の後に付いて来て」
突然の事にゾロは半ば呆気に取られつつ、言われるがまま、大魔王の後を付いて行った。