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魔王之死刀

第8章 ・記憶


 それは今から二年前……ゾロが十九才の時の事であった。
 バエルは思わず円卓に身を乗り出した。
 じっと聞き入る他の魔王族達の胸も、ゾロの血湧き肉躍る話に高鳴る。
 初心を忘れず、常に最強の大剣豪を目指す男……ロロノア・ゾロに、彼等は完全に引き込まれていた。

「……で、その後はどうなったんだ?その斬り掛かって来た者は……」

 問い掛ける声にも、期待と緊張が滲む。
 ゾロは少し間を置き、息を整えてから口を開いた。

「ああ……そいつの追撃は、何とか躱す事が出来たんだ……」

 短く言い切る言葉に、少しばかりの悔しさが滲む。

「その直後、意識を取り戻した鷹の目が助太刀に入って来た。鷹の目と奴の実力はほぼ互角……十数回切り結んだ末、奴は一瞬の隙を見せて……鷹の目にバッサリ斬られた」

 ゾロの声に、戦いの興奮と、自分自身の未熟さを痛感した時の震えが混じる。

「そいつの目的ははっきりしねえ。おれと同じく大剣豪を目指していたのか、単に鷹の目の命を狙ってたのか……まあ、そんなところだろうな」

 最後に微笑み吐いたその言葉に、彼の若干の悔しさと誇りが滲んでいた。
 話を終えたゾロは深く息を吐き、隣で変わらず起立しているルシファーを見上げた。
 彼の左目の傷は一見浅く見えるが、それは深く刻まれており、決意の痕跡の様にも見える。
 大魔王はゾロの顔を見ると、静かに微笑んだ。
 その微笑みに、円卓の空気がさらに引き締まる。
 剣士としての誇り、闘志、そして『初心を忘れぬ心』……全てが、この男の姿に凝縮されていた。

「ゾロ、素晴らしい……魔王らしく、君らしい……実に堂々とした回答だったよ」

 ルシファーは微笑みつつ、そう言ってゾロを称えた。
 そして大魔王は、大広間にいる仲魔達を、ゆっくりと見渡した。

「……皆、これが『ロロノア・ゾロ』と言う漢だ。強くなる為の努力を惜しまず、常に目標に向かい、友を助ける為には己の命を惜しまない……そう言う漢だ……」

 大魔王の言葉を、大広間にいる者達は皆、噛み締める様に聞いている。
 そして彼は、皆に問い掛ける。

「ここにいる皆に問う……我等の新しき仲魔にして、帰還した魔王族の一員……ロロノア・ゾロを、ここに正式に、魔王……二代目死皇帝として迎えたい。異議のある者は、遠慮なく挙手せよ」

 大魔王の威厳ある声が、大広間に響く。
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