第2章 新・アランブール公爵
バリエ男爵家はアランブール公爵家よりも位が下のため、婿入りという形で婚姻した。
そしてそれと同時にリリアンヌの父親であるロバートは隠居、母親のマリアと共に元いた屋敷に戻ることになった。
リリアンヌはアランブール公爵夫人となったのだ。
そんなリリアンヌに与えられたのは美しい宝飾品、ドレス、そして何軒もの別荘だ。
しかしリリアンヌは少しも嬉しくなかった。
「このようなことをして私が喜ぶとでもお考えですか、旦那様」
リリアンヌが言うと、ダミアンはリリアンヌに近寄った。
「そう思ったのでお贈りしたのですよ。それとも、もっと豪華なものをお望みでしたか?」
「違います!私が申し上げたいのは、このような成金のような真似事ではなくアランブール公爵家の当主としての自覚を持っていただきたく…!」
リリアンヌは声を張り上げた。
するとダミアンは微笑みかけた。
「今のアランブール公爵家の当主は私です。また以前のような生活に戻りたいですか?」
「そ、それは…」
リリアンヌが黙り込むと、ダミアンは耳元に囁いた。
「でしたら私の言う通りにするべきですね、リリアンヌ」
ダミアンはそのまま執務室を立ち去ろうとしたが、その場で足を止めて後ろを振り返った。