未来の旦那様、婚約破棄してください【呪術/五条悟/R18】
第1章 蘇る記憶。
何だか変な夢を見ていた。
会社から帰宅する途中で、歩行者側の信号が赤になったのに気が付かずに走り出した小さな子がいて、私は小さな子を守るように庇うとトラックに衝突してしまい、そこで私の記憶はブラックアウトしたのだった。
(あぁ、ファンパレでやっと夏油傑のカードを手に入れたのに···)
消え行く意識の中で、子供が大きな声をあげて泣きわめく姿に、無事な姿を見届けた後に来たのはやり残した後悔だった。
もしも叶うなら、呪術廻戦の世界に転生したい。
そんな馬鹿げた望みを、どうしてしてしまったのかと頭を抱えたのはまた後の話だ。
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(あれ?生きてる··?)
微睡みの中で、重い瞼を開けた。
確かにトラックと衝突したはずなのに痛まない体に、少なからず違和感を覚えた。
ここは病院の一室だろうか。
清潔な白いカーテンに囲まれたベッドの一角で、私は眠らされているようだった。
「おはよう、目が覚めたようだね。今、硝子を呼ぶからちょっと待っていてくれ」
「···、は、?」
目を疑った。
だって目の前には推しの夏油傑がいたのだから。
柔和な笑みを浮かべて、穏やかな彼の声色にドクンと心臓が跳ねたのは言うまでも無い。