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【ヒロアカ】re:Hero

第6章 また明日


何度目かのキスのあと。
唇がそっと離れたその瞬間、轟くんの瞳が、ほんの数センチ先にあった。

深くて静かで、でもどこか――熱を孕んでいて。

私はその視線から逃げられなくて、心の奥が、じわりと熱くなる。

『……恥ずかしい』

小さくそう漏らすと、彼はふっと目を細め、指先で私の髪をなでた。

やわらかく、迷いのない手つき。
でもそこには、確かに優しさが宿っていた。

「……可愛いな」

低く落ちたその一言が、胸のいちばん深いところに、そっと触れる。

触れただけなのに――
なぜか、涙が出そうになった。

こんなふうに、誰かの温度を感じる時間が、
こんなにも静かで、優しいものだなんて。

私、知らなかった。

心が満ちていく音を聞きながら、ただ、そっと目を閉じる。

このまま、永遠に時間が止まってしまえばいいのに――

そんなふうに思った、まさにそのときだった。

――ピンポーン。

唐突に鳴り響いたチャイムの音が、甘い空気を一瞬で吹き飛ばす。

『……え?』

私と轟くんが同時に顔を上げ、視線が交差する。
そして、ふたり同時に「誰?」と声には出さずにつぶやいた。

胸の奥にまだ残る余韻と、焦りが交じる。

私はそっと立ち上がって、玄関へ向かった。

(こんな朝に……誰?)

ドアの前で一呼吸してから、慎重に扉を開ける。

そしたら、そこには――

「ようっ!!来たぜ、お見舞い隊!!」

「おーい!生きてたかー?」

「てか、部屋めっちゃ綺麗じゃん!一人暮らしとかうらやまし〜!」

爆豪、切島、上鳴、瀬呂。
よりにもよって、一番騒がしい組が勢ぞろい。

『……は!?』

衝撃で、思わず変な声が出た。

しかも切島は、お菓子の袋を得意げに突き出してくる。

「昨日ぶっ倒れたって聞いたからさ!先生に住所教えてもらったんだ!」

「……無理矢理、連れてこられただけだ」と爆豪はやや不機嫌そうに呟く。

『ちょ、待って……!!』

あまりに突然すぎて、頭がついていかない。

その間にも、彼らは靴を脱ごうとしたり、お菓子を手に部屋に入ろうとしたり――
いやいや、ほんとに待って、お願いだから。

慌てて玄関を塞ごうとしたその瞬間。
背後から、そっと立ち上がる気配がした。
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