第5章 交わる唇、揺れる想い
昼休みのチャイムが鳴ると、食堂はいつもの賑やかさに包まれた。
トレーを手に、空いている席を探していると、
「おーい!星野、こっちで一緒に食おうぜ!」
上鳴くんの元気な声が響いた。
振り返ると、爆豪くん、切島くん、瀬呂くんが手招きしている。
『あ、ありがとう!でもいいの?』
「もちろんだ!昨日の今日じゃーん!」
嬉しくなって笑顔で席に向かうと、
『かっちゃん、隣いい?』
「うるせぇ!呼ぶなって言ってるだろ!」
二人の掛け合いに、みんなが笑い声をあげる。
席に座り、軽口を交わしながらお昼の時間を楽しんでいると──
――「警戒警報!校内に侵入者発生。繰り返す、侵入者発生!」
突然、警報が校内に鳴り響いた。
「はっ!?なに!?」
「ヴィランかよ!?」
ざわめく食堂の中、私は立ち上がろうとした瞬間、
「行くぞ!」
爆豪がバンッと立ち上がり、強く私の手を引いた。
『えっ、ば、爆豪くん!?』
「いいから来い。はぐれるぞ」
彼の声はいつもより低く、鋭くて。
その瞳には怒りじゃなく、守る意志がはっきりと宿っていた。
混乱の中、彼に導かれながら走り出す。
(すごい…いつも怒鳴ってばかりなのに、こんな時はちゃんとしてるんだ)
握られた手の力は少しだけ優しくて。
少しだけ、彼の背中を信じてみようと思った。