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【ヒロアカ】re:Hero

第17章 死穢と光の狭間で



ナイトアイの腹部からは、深い出血がまだ微かに滲んでいた。

『……っ……』

私は残る力を振り絞り、破れた臓器を縫うように“願う”。

その光が淡く消えた頃、彼の呼吸がかすかに落ち着きを取り戻す。

(……間に合った……)

そう胸をなで下ろしたその瞬間――

 

「……おねえちゃん……!」

 

聞き覚えのある声に、心臓が跳ねた。

振り返る。

目の前には――

血の気の引いた顔で、こちらへ駆けてくる壊理ちゃんの姿。

 

『……え、なんで……!?』

思わず声が漏れた。

彼女は逃げたはずだった。
あの場から離れたはずだった。
それなのに――

 

壊理ちゃんの目はまっすぐに、私を見つめていた。

そして、彼女の後ろにはすぐに追いつこうとするミリオ先輩の姿。

 

『だめ、戻っちゃ――!』

私は立ち上がり、咄嗟に彼女のもとへ駆け出す。

 

でも、次の瞬間だった。

 

“ギギィ……ッ”

嫌な音が床下から響く。

 

足元のタイルが盛り上がる。

それはまるで生き物のように形を変えて――
私と壊理ちゃんのいる空間だけを、地面ごと隆起させていく。

 

『……っ!?』

反射的に手を伸ばした。
でももう遅かった。

 

床がせり上がる。
地面に埋め込まれたような箱型の区画が、私たちをすっぽり囲いこむ。

視界が揺れたと思った次の瞬間――

 

「……逃げても、無駄だ」

 

その言葉と共に、私の背後に、治崎廻が立っていた。

治崎廻の片手は壊理ちゃんの腕を掴み、
もう片方は、私の肩に。

 

床の一部を“再構成”したその空間で、
私と壊理ちゃんは――
彼の手に確保されていた。

 

息が止まりそうだった。

彼の個性は“破壊と再生”。
逃げ場など、最初からなかったのだと――突きつけられた瞬間だった。
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