第5章 交わる唇、揺れる想い
想花side
――どれくらい、眠ってたんだろう。
ふと目を覚ましたとき、部屋の灯りはまだ落ちてなくて、
ソファの上には、かすかにあたたかさが残っていた。
(……寝ちゃってた……?)
ぼんやりした頭でまわりを見渡す。
テーブルの上には飲みかけの紅茶。窓の外には、まだかすかに雨の音。
時間を確かめようとスマホに目を落とすと、画面には「23:47」の数字。
(……やば。もうすぐ日付変わっちゃう)
慌てて身体を起こそうとした瞬間、重みを感じて、はっと息をのんだ。
隣には、静かに眠る轟くんの姿があった。
私の肩にもたれるようにして、ゆっくりと呼吸を繰り返している。
『……っ……』
さっきまで、あんなにちゃんと距離を取って座ってたのに。
(もしかして、途中で……寄りかかってきた……?)
鼓動がドクンと跳ねた。
眠る彼の表情は、いつものクールなものとは少し違って、どこか無防備で。
肩の力も抜けてて、まるで年相応の男の子みたいだった。
(……だめ、ちゃんと起こさないと)
学校だってある。きっと帰るつもりだったんだ。
なのに私が先に眠っちゃって、こんな……。
そっと身体を傾けて、彼に触れないように距離をとる。
『轟くん……起きて』
小さな声で、そっと呼んだ。
その声が、ゆっくりと彼に届いていく――