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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


寮を飛び出して駅に着いたときから、啓悟はずっと私の隣で笑ってた。
電車の中では何も言わずに指先を繋いで、時々、視線だけでからかってくる。
新幹線を降りて、福岡の街に着いたとき――
「ほら、こっち。」
そう言って私の荷物をひょいと奪って歩く背中に、
胸の奥がずっとそわそわしていた。

福岡の空気は思ったより湿ってて、
少し早足の啓悟の背中を追いかけるたびに、
頭のどこかでわかってた。
――今日は、絶対に、ここからもう逃げられないって。

そしてドアが閉まった瞬間、
全部が現実になった。

「……おじゃましま――」
言いかけた言葉の続きを、啓悟の唇が奪っていく。

背中がドアにぶつかって、小さく軋む音。
玄関の冷たい空気なんて、一瞬でどこかへ溶けて消えた。

『……っん……!』

啓悟の片手が腰を引き寄せる。
もう片方は私の頬に触れて、熱を移すみたいに撫でる。
唇の隙間を縫う舌が、遠慮なく深く潜ってきて――
ずっと奥の奥まで欲しいって伝えてくる。

「……ずっと……我慢してたよ、俺……」

低くて甘い声が、唇の端を撫でてくすぐる。
息が、喉の奥で止まる。

『……啓悟……っ』

名前を呼んだ瞬間、また塞がれた唇。
落ちた鞄の音なんて、もう何も聞こえない。
背中を撫でる指先だけが、全部を奪っていく。

「ちゃんと言った通りに……仮免取って……いい子……」

くすぐる声が耳に落ちて、体が震える。
唇が離れた頬に、小さなキスが何度も降ってくる。

『……だから……?』

息を切らせて問いかけると、
啓悟は笑って、獣みたいな目で私を見た。

「だから――ご褒美。」

瞬きする間に、腰を抱えられ、
玄関を抜けて部屋の奥へ。

もう――逃げ場なんて、ない。
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