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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


差し出された真堂くんの手に、私がそっと指先を伸ばそうとした――
その瞬間。

「……想花。」

低くて落ち着いた声が真横から聞こえて、
気づいた時には、私の手首がすっと誰かに掴まれていた。

『……焦凍?』

振り向くと、すぐ隣に焦凍が立っていて、真堂くんを真っ直ぐに見ていた。
その瞳にはいつもの穏やかさがなくて、冷たい氷みたいに静かに光ってる。

「手、繋ぐ必要ないだろ。」

小さくそう言って、私の手を自分のポケットに押し込むみたいに隠した。

『……え、あの……』

困って口を開いたその隙をつくように、背後から誰かが苛立つ声をあげる。

「おいコラ。調子乗ってんじゃねぇぞ。」

振り返ると、勝己が腕を組んで立っていて、
ギラッと真堂くんを睨んでいた。
さっきまで私の横にいた焦凍と同じ制服で、金色の瞳がまっすぐに敵意を向けてる。

「人のもんに気安く手ぇ伸ばしてんじゃねぇよ、クソ他校。」

真堂くんは少し目を丸くしたあと、すぐにフッと笑った。

「へぇ、なるほどね。
噂には聞いてたけど……ほんとに大事にされてんだなぁ。」

そう言って、焦凍の手元と私を交互に見る。
少しも引かない。逆に余裕の笑みを浮かべたまま、肩をすくめた。

「安心しろって、取ったりしないからさ。
また試験で会おう、想花ちゃん。」

そう言って、真堂くんは軽く手を振り、背中を向けて人混みに消えていった。

残った焦凍と勝己が、どちらとも言えない無言の空気をまとっていて、
私は小さく苦笑いして、繋がれた手をぎゅっと握り返した。

『……ちょっと、ふたりとも。』

試験前からこんなんで大丈夫かなって思いながら、
胸の奥はちょっとだけ、熱かった。
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