第13章 この手が届くうちに【R18】
別side
扉が静かに閉まった。
わずかな音すら重く響く空気の中、ホークスは深く息を吐き、真っ直ぐに四人を見た。
彼の顔には、さっきまでの感情は消えている。プロヒーローとしての仮面が、ぴたりと張りついていた。
「――現場で、何があった」
低く落ち着いたその問いに、四人は互いに目を合わせる。
答えなければならないのに、誰の口もすぐには開かなかった。
沈黙を破ったのは、轟だった。
「……想花は、最初、そこにはいなかった。俺たちが辿り着いたのは、生産施設の跡地で……もう、瓦礫しかなかった」
緑谷が小さく頷く。
「でも、その後。ヴィランたちと一緒に、彼女は――ワープで現れました」
拳を強く握ったのは、爆豪。
「……抱きしめられてた。ずっと、そいつに」
声は低く、噛みしめるように続く。
「顔の左側……皮膚が焼けただれて、まるで炭みてぇに黒く焦げた男だった。髪は黒っぽくて、目だけが異様に光ってた」
一瞬、誰かが息を呑んだ気がした。
その男の姿が、目に焼きついて離れない――そんな表情だった。
「……そいつは、何度も言ってた。 “俺のもんだ”って。まるで、所有物みてぇに」
切島の声がかすれた。
「彼女……抵抗してたけど、力が残ってなかった。……無理やりだった」
静寂が落ちる。
ホークスの目が、わずかに揺れた。
そして、奥歯を噛みしめる音だけが、かすかに響いた。