第11章 ドキドキ期末
あの日差しは、どこか戦いの火蓋のようだった。
演習場に並んだ1-Aのメンバーたち。
その誰もが、心のどこかで静かに気持ちを整えている。
私も、その列の一人だった。
手のひらが少し汗ばんでいるのを、制服の裾でそっと拭う。
『……これが、実技試験』
筆記が終わって間もないのに、息をつく間もない。
でも、これが“雄英”だ。わかってる。
前に立つ教官陣。
その中心に、プレゼント・マイクの朗々とした声が響いた。
「ヒーロー科1-A、実技試験を開始する!内容は──教師との模擬戦闘!」
一気に空気が張りつめた。
「ペアで行動し、教師の拘束またはフィールドからの脱出を目指せ。
制限時間は15分、失格条件は行動不能または時間切れだ!」
ざわっ、と小さなざわめきが起こる。
けれど、それを吹き飛ばすように次の言葉が放たれた。
「今回、君たちはランダムに選ばれたペアで試験に臨んでもらう。
発表するぞ!」
モニターに順に表示されていく、見慣れた名前たち。
でも、それが並ぶたび、場の空気が少しずつ変わっていく。
「爆豪&緑谷 VS オールマイト」
「轟&八百万 VS イレイザーヘッド」
「瀬呂&峰田 VS ミッドナイト――」
次々と呼ばれていくペアと対戦相手――
みんなが、それぞれの相棒と視線を交わす。
そして──
最後にひとつだけ、画面に浮かぶ。
「星野 VS 相澤」
その瞬間、言葉が出なかった。
『……え、ひとり?』
動揺が、瞬時に胸を満たしてくる。
周囲のざわつきが、少しだけ遠く感じた。
「特例だ。人数の都合でひとり余るのは当然だが──
想花には、個別に試験を受けてもらう。教師は、イレイザーヘッド」
プレゼント・マイクの言葉に、私は目を見開く。
『相澤先生と、1対1……?』
戸惑う私の隣で、切島くんが「おお、マジか……」と小声で漏らす。
上鳴くんは「お、お前だけソロ!?先生相手に!?」と目を丸くしていた。
でも、先生の表情は変わらない。
冷静な目で、ただ静かにこちらを見つめている。
「お前ならやれる。そう判断した。……それだけだ」
言葉は少ないけれど、そこに甘さはない。
本気でぶつかってくるつもりだ──私も、覚悟しなきゃいけない。
でも、どこかで……ほんの少しだけ、
その言葉が、信頼みたいに胸に灯った気がした。