第11章 ドキドキ期末
午後の陽だまりが、静かに部屋の隅々まで染み込んでいた。
勉強机の上にはシャーペンとプリント、残されたメモ書きの山。
それでも今は少しだけ手を止めて、深く息をつく。
ふいに玄関のチャイムが鳴って、リビングに和やかな空気が流れ込む。
『……帰ってきた、かな?』
ドアを開けると、勝己と切島くん。
その手には、小さな白い箱が抱えられていた。
「よっしゃ、ご褒美タイムだ!」
「ちょっとした差し入れってやつだ」
笑顔で差し出されたその箱の中には、カラフルなケーキがぎゅっと詰まっていて──
ふわりと広がる甘い香りに、自然と心がほぐれていく。
『……ありがとう。嬉しい……すっごく』
ぽそっとこぼれたその言葉に、勝己がちらりとこちらを見て、すぐそっぽを向いた。
「……休むのも、戦略のうちだ」
その横顔がなんだかいつもより優しく見えて、私はちいさく笑ってしまった。
ふわふわのクリーム、ベリーの酸味、ほろ苦いコーヒー。
みんなで囲むケーキの味は、甘いだけじゃなくて、どこか懐かしかった。
「この週末、めっちゃ勉強したよな〜」
「なあ、オレたち、けっこう頑張ってね?」
「うん。……ほんと、がんばったよ」
積み重ねた時間の分だけ、心の中にあたたかい火が灯っていく気がした。
笑って、つまずいて、励まし合って。
ただそれだけの、でも特別な週末。
この時間が、いつか記憶のどこかで光りますように。
きっと──期末が終わったあとにも、また笑い合えますように。
私はそっと願いながら、残りひと口のケーキを運んだ。
そして、静かに呟く。
『……明日のテスト、頑張ろうね』