第9章 雄英体育祭
轟「"超常"が起きてから、第2,第3世代間で問題になったやつ」
(へぇ…てかそもそも個性に世代とかあることも今知ったよ…)
轟「自身の"個性"をより強化して、子供に継がせるためだけに配偶者を選び、結婚を強いる。倫理観の欠落した前時代的発想」
(なるほど…轟くんはそれで苦しんでるんだ)
轟「実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み、母の個性を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってこった」
緑「はっ…」
「…」.
轟「鬱陶しい…そんなクズの道具にはならねぇ…!」
2人は轟の次の言葉を待った。
轟「記憶の中の母はいつも泣いてる。"お前の左側が醜い"と、母は俺に煮湯を浴びせた」
緑「はっ…」
(今の言い方と表情…多分、轟くんはお母さんを愛してた。…私はなんの感情も無い他人に傷つけられてきた。だけど轟くんは…愛していた人に、信じていた人に、傷を負わされた。もしかしたら私より、つらかったのかもしれない)
轟「ざっと話したが、俺がお前らにつっかかんのは見返すためだ。クソ親父の個性なんざなくたって…いや、使わず1番になることで…やつを完全否定する」
デクはあまりに違う世界の話で、戸惑っていた。
目指す場所は同じでも、こうも違うのかと。
緑「ぼ、僕にそうするのは分かった…でも…繋原さんは…?繋原さんは、轟くんを気押しても、見下したりしていないのに…」
繋原がずっと抱いていた疑問をデクが投げた。
も轟の答えに注目した。
轟「…うちのクラスで今、1番驚異に感じているからだ」
緑「あっ…」
「…」
轟「お前も緑谷と同じように相澤先生に目をかけられている。どういう関係か知らねぇが、お前のその個性の使い方と、冷静な考え方、普通に過ごしていて身につくものじゃない」
「…うん。そうかも。それは否定しないよ。でも…」
轟「…」
「張り合うわけじゃないけど、私も、轟くんと同じように…いや、轟くんほどでもないかもだけど…"少し"過酷な環境にいたってだけだよ」
轟「…言えねぇなら別にいい。過去のことも。先生たちとのつながりも」
轟は2人を見て言うと背を向けた。
そして歩きながら言葉を続けた。