第3章 遅れてきた春
――雄英入学初日。
春の空気がまだ少し肌寒い朝。雄英高校の講堂には、新入生たちの緊張と期待が満ちていた。
入学式は、静かに、そして粛々と進んだ。
壇上では校長が挨拶を述べ、生徒たちの前にはヒーロー教師たちがずらりと並んでいる。
生徒A「……やっぱ轟くん、推薦だったんだって」
生徒B「マジで?そりゃエンデヴァーの息子だもんな……」
生徒C「ってか、もう一人いなかった?入試にいなかった子……女子」
生徒D「いたいた、さっきチラッと見えたよ。手袋してた……あれ、たぶん噂の“特例枠”じゃね?」
生徒A「特例……? 何それ?」
生徒D「教師の間でもちょっと話題になってるらしい。正規の入試じゃない推薦。政府から来た子、みたいな」
生徒B「え、なんかやばい個性持ってるとか……?」
生徒D「詳しくは分かんない。でも……あの雰囲気、なんか近寄りがたい感じあったよ」
廊下を歩く生徒たちの間で、静かに広がっていく憶測と噂。
誰もが新生活に胸を躍らせるなか、その話題は、異質な色を帯びていた。