• テキストサイズ

例外のヒーロー【ヒロアカ】

第2章 これが“ヒーロー”だって言うなら


雨は弱まり、空がわずかに白み始めていた。

相澤はポケットから何かの書類を取り出し、少女の前に差し出した。

相「これは、個性特異者保護の申請用紙だ。ここにサインすれば、仮の身元を作ってやれる」

はそれを受け取り、じっと見つめる。

「……それで、何になるの」

相「お前がこの先、自分で決めて生きるための足がかりだ」

は一瞬だけ視線をそらし、低く呟く。

「……ヒーローになれば、生きててもいいのかな」

相澤は、わずかに口元を動かした。

相「ヒーローでなくても、生きてていい」

は黙った。だが、ほんのわずかに表情が揺れる。

「……ありがとう。……でも、私は自分で、自分を認めたい」

その言葉に、相澤はわずかに目を細めた。

相「その傷……普通に生きてきたやつが負うものには見えない」

はゆっくりと視線を落とし、ぽつりと漏らす。

「私の能力、珍しいみたいだから」

相「いつからその個性を?」

「わからない。ずっと昔から……でも、使い方は、壊されながら覚えた」

相澤は表情を変えなかった。ただ、静かに視線を落とし、言った。

相「……全部は聞かない。今はな」

はしばらく黙っていたが、やがて、小さくうなずいた。

その頷きに、朝がようやく訪れる気配が重なった。
遠くで、誰かの車のエンジン音が聞こえる。

彼女の正体はまだ何も分からない。本人さえも。
けれどその日、確かに“何か”が始まったのだった。

相澤は何も言わなかった。
ただその目で、まっすぐにを見ていた。
/ 95ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp