第5章 戦闘訓練
その場を去ろうとすると切島と八百万が話しかけて来た。
切「背中、大丈夫か?悪ぃ…あんなまともに当たると思ってなくて…」
「大丈夫だよ。私、人より耐性あるし」
切「…優しいな。繋原は」
は俯きがちだった顔を上げた。
切「八百万が足痛めてるの分かったから、戸惑ったんだろ?じゃなきゃ俺のタックルなんてまともに当たらねぇだろ」
「…怪我、させちゃったかもって…思って…」
八「このくらい平気ですわ」
「八百万さん…」
八「雄英のヒーロー科に入って怪我を恐れるなんて、そんなの愚の骨頂です。入った時にもう怪我なんてものはたくさんする覚悟でしてよ」
「怪我したら、痛いんだよ…傷は治るけど、痛みは忘れられないし。だから、怪我するのを恐れないのは、ダメだよ。恐れないと」
は八百万の言うことを素直に聞き入れられなかった。
怪我をさせそうになった自分も、躊躇して相手を軽んじた自分も、許せなかったから。
八「…恐れてないわけじゃありませんわ。怖いですけど、その怖さも乗り越える覚悟を持ってここに私はいるということです」
「……」
八百万の言葉が胸に刺さった。
恐れないことと乗り越えることは違う。
はその違いに気づけなかった。
切「まぁ…でも、俺は嫌いじゃないぜ。人に個性使う時、戸惑えるやつ」
「……くっ…」
切島の優しさがさらに胸を抉り、いつもより少し多い涙がの眼を覆っていた。
切「ただ次もし勝負するときあったらそん時は全力でかかってこいよ!」
は黙って小さく何度も頷いたのだった。