第5章 戦闘訓練
目の端に見えたのは、八百万が滑った足で少し足首を痛めたように、苦しそうな表情をしている姿だった。
(……さっきの床、私のせいだ。無意識に、相手の関節を壊してしまってたら……)
一瞬、手が止まった。
その隙を切島は見逃さない。
ズドォン!!
全身を硬化させたタックルがの胴に炸裂。
衝撃で後ろへ飛ばされ、壁に背中をぶつけて落ちる。
「っ…!」
(息がっ…)
轟「っ……繋原!!」
次の瞬間、八百万が核兵器の箱へ到達し、回収。
ヒーローチーム、勝利!
⸻
室内に警報が鳴り響き、訓練終了が告げられる。
(肺胞を分解して…最大限吸えるように…)
が少し息をつくと轟が駆け寄り、を支えた。
轟「大丈夫か?」
「うん…ごめん。私のせいで。負けちゃった」
轟「別にいい。……手加減したのか?」
「……わかんない。……でも、あのまま続けてたら……八百万さんが……」
轟「……」
彼はしばらく黙っていたが、やがて少しだけ顔を曇らせ、静かに言った。
轟「……相手に躊躇するな。戦場でのそれは、相手を侮辱することになる」
「……!」
轟「でも……お前が、誰かを思って止まったのなら、それを全否定はしない」
言い終えると、彼はすっと立ち上がり、に手を差し出した。
轟「次は、迷う前に“選べる”ようになればいい」
はその手を見つめ、小さく、でも確かな意志で、頷いてそれを取った。