第4章 個性把握テスト
相「……それ、どうした」
「……え?」
が一瞬きょとんとした顔をして、彼の視線の先をなぞるように自分の首元に手をやった。
制服の襟のすぐ下、赤く擦れた跡――爆豪に胸ぐらを掴まれた痕だった。
「……大丈夫。ちょっと力強かっただけで」
相「誰に?」
しばし黙ったあと、は言った。
「……爆豪くんです。“個性を言え”って、少しだけ……」
相「“少し”じゃなさそうだな」
その言葉に、は視線を落とした。
「……でも、怒ってたの、わかるから。私の言い方も悪かったと思う。緑谷くんのことで、なんか……」
相「……」
相澤は一瞬だけ目を伏せ、それからふっと溜息をついた。
相「まったく……ヒーロー科の担任ってのは、手のかかるガキばっかだ」
「……私も?」
相「もちろん」
小さく笑ったその瞬間、の頬が少しだけ緩んだ。
相「……だが。そうやって“自分のせいかもしれない”とすぐ思う癖、少しずつでいい。直せ」
「……え」
相「原因を見つけて処理する。それはヒーローにとって大事な思考だ。だが、全部自分のせいにするのはただの自己犠牲だ。……いずれ潰れるぞ」
それは、彼自身が見てきた“誰か”への記憶とも重なっていたのかもしれない。
は、胸の奥に、言葉にできない何かを感じた。
「……はい」
夕焼けが差し込む廊下の中で、静かに交わされたその言葉たちは、
誰にも見えない距離を、少しだけ近づけていた。