第4章 個性把握テスト
この後、爆豪がデクに大激怒し、飛びかかっていったが相澤の個性により止められた。
そしてドライアイが弱点なことも生徒に知られてしまった。
そしていよいよの番が来た。
(やばい…さっきはあんま自覚なかったけど、あんなこと言った手前、しょぼい結果は出せない…うぅ…後悔…)
ボールを手に取り、無言で円の中央へゆっくりと歩き出す。
お茶子や耳郎が「頑張ってー!」と声をかけたが、それに応える余裕はない。
(構造記憶を先に仕込んでおく。筋繊維は耐圧モード、骨格は回旋と加速に特化…)
左肩から前腕にかけて、わずかに光が揺れる。
彼女の“能力行使”はあくまで内側で起こる。外からはほとんど見えない。
(……風を読んで、握力は握力でなく、“放す力”へ変換)
ボールを持ったまま、そっと目を閉じた。
静寂。まるで音を吸い込んだかのような、濃密な静けさ。
その手はしなやかに振り抜かれる。
滑らかで、力任せでも豪快でもない。
だが、どこか“生き物ではない何か”のような、正確すぎる軌道だった。
ボールは、線を描いて空を突き抜けていく。
やがて、タブレットに表示された数値がざわめきを呼ぶ。
「681.8m」
A組「うおっ……」
切「すっげぇ…!」
瀬「なんで!?あんなに静かなのに、なんで飛ぶんだよ…!」
耳「やっば……マジすごいじゃん!」
轟(……一体どういうことだ?)
爆豪はその記録を見て、ぎり、と奥歯を噛み締めた。
爆「……クソ……なんなんだよ!」
そして相澤は、データを見たまま呟く。
相「投擲筋力は平均値をやや下回っている。だが…出力の集中、分散の制御、タイミングの一致。投擲技術としては、現時点でトップクラスだな」
一方、はその記録を確認し、ほんの少しだけ息をついた。
(……よかった。メンツは保てた……たぶん)
胸をなでおろしたその時、背後からひそひそと囁く声が聞こえた。
瀬「やっぱすげぇな、あいつ…」
峰「見た目に反して化け物系じゃねぇか……」
峰田の声にまたは冷たい視線をやった。
峰「ヒッ…!!い、良い意味でな!いい意味で!」
そして彼女はただ静かにボールを置き、列に戻った。