第4章 個性把握テスト
ここでは青山や爆豪など、空中浮遊や推進力のある個性を持つ者が有利とされた。
次々と記録が更新されていく中、の番が回ってくる。
生徒たちは自然と注目した。
先ほどの50m走と握力測定でも圧倒的な力を見せていた彼女が、今度はどんな跳躍を見せるのか。
はゆっくりとラインの前に立ち、深く息を吸う。
(瞬発力は脚部筋群と腱の連動。問題は……着地時の衝撃。骨格と靭帯は事前に耐性構造にしておく)
彼女の両脚がわずかに発光する。神経信号の流れが通常のそれとは違い、脊髄からの経路を一部遮断・再構成するような、異様な静けさを持った動き。
(感覚は落とす。バランスだけは維持して――)
ピッ、と電子音が鳴る。
跳躍の瞬間、の身体は“跳ねる”というより、“滑るように”宙を舞った。
筋繊維の再配置による反発力、そして瞬間的な神経伝達速度の上昇。
地面に着地したのは、一拍後だった。
「2m84cm」
その記録に、周囲がざわつく。
麗「うわっ、すご……!」
切「すげえ!普通に跳んでたのに、なんであんな距離…?」
耳「いやでも…なんか変だったよね?音とか、動きとか……」
爆「チッ…」
緑(跳躍直前に、一瞬だけ姿勢が変わった。筋肉の反応……あれ、普通じゃない)
轟(動きに迷いがない……“調整”してる、まるで自分の身体を……)
そして、デクは記録表を手にしながら、目を凝らしていた。
緑(“分解と再構築”……?まさか、内部から身体をいじってる…?)
その分析はまだ確証に至らなかったが、疑念は確かに彼の中に芽生えつつあった。
――そのとき。
が、ふらりと一歩、よろける。
(……やっぱり……神経系の負担が残る……)
麗「だ、大丈夫!?」
すぐに駆け寄ったのはお茶子だった。
「……うん。ちょっと目が回っただけ」
そう言って微かに笑う彼女に、お茶子は安心したように胸をなでおろす。
麗「よかった……無理しないでねっ」
近くでそれを聞いていた切島は、真剣な顔で呟いた。
切「でも……すげえな。何者なんだ、繋原……」
クラスの空気が、再び変わり始めていた。