第11章 職場体験
その後、は集中治療室へと運ばれた。
翌日も容体は変わらず、隔てられたガラスの向こうで、は静かに眠っていた。
規則正しく鳴る心電図の音。
薄く白いシーツに包まれた小さな身体。
その前の長椅子に、相澤はひとり、静かに座っていた。
腕は組まず、足も組まず、ただ前かがみに、肘を膝につき、顔を伏せるようにして。
心の中で、ひとつ息を吐く。
相(……よく、やったな)
この数年で、自分が教えた生徒たちの中で、これほど“命を張った”奴が、どれだけいただろう。
相(……立派だった)
誰かを守るために、命を懸けて。
でも――
相(……生きたいって思うなら、もっと自分を大事にしろ)
目を閉じて、眉をひそめる。
相(……起きたら、たっぷり叱ってやらないとな)
そんな言葉をかける自分の姿を想像しながら、相澤は静かに目を開き、ガラスの向こうのを見つめた。
――その目は、どこまでも静かで、
けれど、どこか温かかった。
……その背後に、気配がひとつ。
黒い忍装束に身を包んだエッジショットが、無言で立っていた。
だが、相澤は気づかない。
エッジショットは、しばらく黙ったまま、彼の横顔を見つめる。
その目の奥に、ふと何かがよぎる。
エ(……この男にとって、あの子は……)
それが何か、言葉にはならない。
だが、明らかに“ただの教師と生徒”の関係ではないことを、彼は確かに感じていた。
エ「……イレイザーも来ていたのか」
相澤は目線だけをエッジショットの方へ向けた。
エ「……大事に、してるんだな」
エッジショットの言葉に反応することなく、相澤はの方へと視線を戻した。
その代わり、相澤は口を開いた。
相「……あいつには、頼れる大人がいないんでな。あいつを見てやるのが俺の"役目"だと思っていた」
エ「……」
相「はずなんだがな……」
黙って耳を傾けていたエッジショットは、すこし顔を上げた。
相「……いつからかもう"それだけ"じゃなくなってたよ」
そう言ってを見つめる目は明らかに慈しみを含んでいた。
エ「イレイザー…」
エッジショットは相澤の奥底にある気持ちに、うっすら気づいたが何も言わなかった。