第11章 職場体験
エ「……分かってて、行かせたんだ」
その言葉に、相澤は目を細めたまま、無言で数秒を置いた。
やがて――
相「……俺としては、何としてでも引き止めて欲しかった」
そう言った後、ほんのわずかに目を開く。
相「でも……あいつのことだからな。無理に止めれば、きっとまた自分を呪ってただろう」
エッジショットは、わずかに肩を落とし、唇を引き結ぶ。
その顔には、明確な後悔と、罪悪感がにじんでいた。
相澤は、それを横目で見て、微かに口を引き結び――
相「……無事、ではないが。命を持って帰ってきただけ、まだ良しとしよう」
それは、相澤なりの“許し”とも取れる言葉だった。
だが、エッジショットは苦しそうに顔を歪め、ただ小さく――
エ「……ああ」
短く頷くしかなかった。
しばらくすると、手術室の扉が静かに開いた。
医師が、帽子を取ったまま現れる。
相澤はすぐに立ち上がった。
相「容体は」
医師は、一瞬だけ表情を引き締め、しかし落ち着いた声で告げた。
医師「――一命は、取り留めました」
エッジショットが、わずかに息を吐いた。
だが、医師はすぐに続ける。
医師「ですが、まだ安心はできません。損傷が深く、体力の消耗も激しい。……あとは、本人の生きようとする力に、かかっています」
相澤は黙って医師の言葉を受け止めた。
医師「ですが、このまま回復が順調にいけば……そのうち、目を覚ますでしょう」
相「……そうですか」
短くそう言って、深く一礼する。
相「……ありがとうございます」
医師も軽く会釈を返し、再び手術室に戻っていった。
静かに扉が閉まり、再び、廊下に沈黙が戻る。
エッジショットは、こぶしを握ったまま、
どこか苦しそうに目を伏せていた。
相澤は、そんな彼を横目で見ながら、ぽつりと口を開く。
相「……生きる気力なら、あいつは誰よりもある。大丈夫だ」
その一言が、空気を少しだけ、温かく変えた。
エッジショットは、ふっと小さく目を閉じて、静かに頷いた。