第4章 個性把握テスト
相「生徒のいかんは俺たちの自由」
相澤は髪をかき上げ、肩越しに一瞥をくれる。
相「ようこそ。これが雄英高校ヒーロー科だ」
その言葉に、怯える者、ニヤリと笑う者、息を飲む者……生徒たちの反応は様々だった。
麗「最下位除籍って…入学初日ですよ…? いや…初日じゃなくても理不尽すぎる!」
納得いかない様子で声を上げたのは、お茶子だった。
だが、それに答えたのは――相澤ではなく、だった。
「……自然災害、大事故、そして身勝手なヴィランたち。ヴィランだけじゃない、悪意を持った人間も。いつどこから来るか分からない厄災」
その静かで、芯のある声に、周囲の生徒たちが思わず振り向く。
はまっすぐ前を向いたまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「日本は……ううん、世界は理不尽にまみれてる。そういうのから守って、助けて……ピンチを覆していくのが、ヒーローなんじゃないかな。みんなが“なりたい”って思うヒーローって、そういう存在だと思う」
それは、望んだわけでもない個性のせいで、理不尽に傷つけられてきた自分を――
ただ一人、真正面から救ってくれた、あの男の背中を思い出しての言葉だった。
一瞬の沈黙のあと、爆豪が鼻で笑った。
爆「ケッ……偉そうに」
その目つきには皮肉と、ほんの僅かな興味が混ざっていた。
緑「……あぁ……」
麗「……」
教室の空気がじわりと変わっていく。
相「繋原の言うとおりだ」
言葉少なに、しかし重く告げる相澤の声が、全員の耳に染み入る。
相「放課後マックで談笑したかったならおあいにく。これからの3年間、雄英は全力で君たちに“苦難”を与え続ける」
全員が、思わず相澤を見る。その視線の中で、だけは――まっすぐに彼を見ていた。
相「“更に向こうへ”。“Plus Ultra”さ。全力で乗り越えてこい」
その言葉に、全員がハッと息を呑んだ。
教師としてではなく、“覚悟を問う大人”の声だった。
相「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」
相澤が視線を前へ戻す。
(……やらなきゃ。私はここで“始める”。自分でそう決めたんだ)
そして、個性把握テストがついに始まった――。